認めるとラクになる


もともと僕はマイナー志向だ。
映画も「全米ナンバー1」みたいなハリウッド超大作モノは好んでは観なかったし
最近はあまり読まなくなったが日本のミステリーよりラテンアメリカの作家が好きだったし
アイドルよりもCMにちらっと出てくるモデルの方が気になったりする。
野球も巨人はキライだ。


そういう、文句なしに売れているものに対して斜に構えてしまうところがあった。



「いつかはおれも」と思いつつも、結果が出ず、
それでいてメジャーなものに対して斜に構えてダメ出ししたりする。
自分もそういうメジャーなもの、メジャーな場に憧れているにも関わらず
その場に関わることもできず、関わり方もわからず、ただただくすぶっている。



なんともカッコ悪い。



グラフィック中心の広告制作会社にいたとき、
そういう、メジャーになれず、その場に立つこともできず
メジャーなものに対してダメ出しをし、メジャーになれないことへの
言い訳として自分がマイナー志向であることを語る先輩がいた。



正直こわかった。



なりたかった自分になれなかった言い訳として、
自分がマイナー志向であることを語る自分が容易に想像できた。
大きなクライアントの仕事もすることができず、クライアントとさえ
会えずに、手応えのないものをつくり続ける。




そこで、僕は、こう考えることにした。



「売れているモノには売れている理由がある」と。




いままで好きじゃなかったものを、好きになろうとしたわけではない。
少しだけ、こころを開いたのだ。
認めた。受け入れたのだ。



そうすると、ずいぶんと気持ちがラクになった。



そう考えられるようになったのと、仕事がうまく行き出したのが
どっちが先か、どう影響しているのかは思い出せないけれど、
メジャーなものに対して少しだけこころを開いた頃から、
少しずつ仕事が好転したのだと思う。



コピーのぜんぶ―仲畑貴志全コピー集

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